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天神スカイホールSPRING座談会「美食奥談」

福岡が誇る食文化を世界へ
思いは熱いほど広がっていく

 西日本新聞会館(福岡市中央区天神1丁目)は開館40周年を迎えた2015年、16階の福岡国際ホールを「天神スカイホール」に一新。多くの人が集い楽しめる空間を目指したリニューアルを記念し「にぎわいのある福岡の街づくり」を主題にした座談会シリーズを展開している。
今回は「福岡の食と酒を日本・世界に発信しよう」をテーマに、福岡から国内外へ日本酒や地域文化、ビジネスを発信している3氏が、同ホールの春の新メニューを味わいながら語り合った。

右から◆博多町人文化連盟理事長 西島 雅幸氏 ◆日伊経済連合会 事務局長 吉村 友見氏 ◆喜多屋 代表取締役社長 木下 宏太郎氏

福岡に息づくおいしさがイタリアの食にも通じる

 —2013年、国際的に権威のあるワイン品評会IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)で「大吟醸 極醸 喜多屋」がチャンピオン・サケを受賞し話題になりました。

木下 玄界灘の幸をはじめとする魚介類、和牛、水炊きやもつ鍋…。挙げればきりがないほど豊かな福岡の食材や料理に本当に合う日本酒を造りたいと、試行錯誤を重ね「大吟醸 極醸 喜多屋」を生み出しました。芳醇でありながら透明感のある味わいが特徴です。

西島 酒米には糸島産の山田錦を使うとんしゃあとですね。

木下 はい。福岡産の米を使い、幅広く奥が深い福岡の食を受け止める福岡の酒を造ることが 、喜多屋の大きなテーマです。

西島 博多だけ見ても名物料理がいろいろ。個人的には、博多の食文化を集約しているのは、あごだしでブリやかつお菜などが入っている「博多雑煮」、そして博多の朝食に欠かせない風味あふれる「おきゅうと」じゃなかでっしょうか。

吉村 雑煮の話が出ましたが、日本で地域によって雑煮のレシピが異なるように、イタリアの食文化も地方によってそれぞれ。その多様性が大きな魅力といえます。また概してイタリア料理はシンプルな味付け。新鮮でおいしい福岡の食材はイタリア料理と相性がいいと思います。

木下 三方が地中海で南北に細長いイタリアと日本の自然環境は似ていて、イタリア人も魚介類を多く食べるという共通点も。

吉村 そうなんです。意外なところでは、福岡でももつ料理は多いですが、ローマにもイタリアでは珍しくもつを食べる文化があるんですよ。

西島 博多の人間はにぎやかなことが大好き。とにかくよか人(自分と気の合う人)と一緒に、よかもんを食べて飲んで盛り上がりたい。誰と食べるかシチュエーションにこだわることも、博多の食の本質に通じるっちゃないでしょうか。

天神のど真ん中からますます美味の融合を

 —当ホールは糸島産の野菜や魚介類、肉をはじめ福岡、九州の食材を中心に使い、フランスの家庭料理や博多の伝統食も含め多彩な料理をご提供しています。当ホールのご感想をお願いします。

西島 長年、当連盟のパーティーなどで使わせてもろうとりますが、天神のど真ん中にあるので皆が集まりやすい。リニューアルして福岡の食材を味わえるようになったし、料理もますますレベルが上がってますね。

吉村 年に1度の「西日本国際ビジネスフォーラム」を毎回このホールで開催。各国の在日本領事など会議の参加者をここの食事でもてなすこともできるので重宝しています。前回のフォーラムでは、イタリアから来た食品バイヤーによる商談会の商材と和の食材を融合させたシェフのオリジナルメニューを味わっていただき大好評でした。

木下 ロケーションとキャパシティーが理想的で、昨年から「喜多屋 酒蔵開きin 天神」をこちらで開催しています。「大吟醸 極醸 喜多屋」をはじめ当社の商品が飲み放題になる、いわばファン感謝デーです。今年は6月23日(金)に開催を予定しています。いっそう多くの方に「うまかぁ」と満喫していただけたら。

 —今日は皆さまにイタリアと博多の味が融合した新作メニュー「もつ鍋風 トマト煮込みのリガトーニ 特製ジェノバ風 ニラソースとともに」や「博多あまおうと喜多屋の日本酒を使ったティラミス」を味わっていただいています。

木下 しっかりしたソースで煮込まれていて、濃厚なこくが際立っていますね。この味、大好きです。うちの「蒼田」と完璧に合います。

西島 もつ鍋とイタリア料理との出合いがこんなに新鮮なおいしさを生むとですね。

吉村 ティラミスは日本酒を使っているのでさっぱりしてチーズケーキの延長のようなテイスト。国内外の方が多く集うこの場所で福岡の美味と他国の料理が一体化したメニューを提供すれば、福岡の食をより広く発信することにもつながりますね。

ローカルを磨いてこそグローバルに羽ばたく

 —福岡の食や酒の国内外への発信について今後の活動予定やお考えを。

吉村 イタリアでは日本文化や日本への旅行の人気が年々高まり、10年前ローマやミラノに数件しかなかったジャパニーズ・スタイルの店が数百件に。その割には現地調達できる和食材は限られていて今後増えるよう支援したいと思っています。

木下 当社は長年輸出にも取り組んでおり、現在、製品の約1割が海外向け。イタリアへの輸出もこれから視野に入れていきたいところです。

吉村 欧州をはじめ国際的に和食への注目度が高まっている今、福岡の食や酒を世界にアピールする好機でもあると言えます。各国で有名なシェフやオピニオンリーダーなど影響力の大きい方々に福岡の酒や料理などを味わってもらい、その魅力を発信してもらうのも一つの方法では。

木下 確かにそうですね。私どもの根底にあるのは「より多くの人に福岡の酒や食のすばらしさを知ってほしい」という熱い思い。それが強ければ強いほど言葉や文化を超えて受け止めてもらえると実感しているので、今後も挑戦していきたい。

西島 料理に梅一輪をあしらうなど季節を愛でる心や、博多では正月料理にやりくりがうまくいくという縁起担ぎの意味がこもった「栗はい箸」を使うなど、食にまつわるエピソードを海外の人に伝えるのも大事じゃなかでっしょうか。

木下 世界で通用するのは国際的、無国籍風な物でなく、ローカルを突き詰めて高みに達した品です。その土地ならではの背景やストーリーを持っていないと世界という舞台で輝けません。

西島 それには自分たちが誇れるものを何が何でも世界に広めたいという心意気が、まずなからないかん。

木下 同感です。これからも福岡の食のすばらしさを一段と引き立てる酒を造り続け、さらに世界に発信していきます。

右から ◆博多町人文化連盟理事長 西島 雅幸氏 1968年、父の故西島伊三雄氏主宰の「にしじまアトリエ」入社。グラフィックデザイナーとしての受賞歴多数。2015年、伊三雄氏が初代を務めた同連盟の理事長に就任。
◆喜多屋 代表取締役社長 木下 宏太郎氏 約200年続く八女市の蔵元の7代目。1992年、喜多屋に入社。99年から現職。江戸時代からの「主人自ら酒造るべし」の家憲を踏襲し、酒造りに励む。
◆日伊経済連合会 事務局長 吉村 友見氏 イタリアをはじめ欧州・日本間の経済交流促進を目指す同連合会商談会の開催や海外進出のコンサルティングなどに取り組む。イタリア留学経験も。

 

天神スカイホール 春の新提案

今回の座談会で味わっていただきました。

もつ鍋風 トマト煮込みのリガトーニ 特製ジェノバ風 ニラソースとともに


ローマ地方には内臓を使った郷土料理がいくつかある。博多もつ鍋のテイストを生かしながら、もつとリガトーニ(筒状のパスタ)を煮込んだ料理。仕上げにチーズとニラソースを加えている。

博多あまおうと喜多屋の日本酒を使ったティラミス


日本でもすっかり定着したデザート、ティラミスはベネチア生まれ。通常スポンジに染み込ませるリキュールを喜多屋の日本酒に替え、あまおうを飾って福岡スタイルのスイーツに。